SR-Xが保管されていた坂出マリーナ(香川県坂出市)に到着したのはスタートフィッシングの6時を目前にした早朝。辺りはまだ暗い。闇に浮かび上がる白いSR-Xのデッキを雨が静かに叩いていた。それでもアングラーたちの表情は平静だ。しっかりとオイルスキンに身を包むと、タックル一式を手早くボートに積み込み、空が明るくなるのを待って舫を解いた。
最初に目指したのは坂出の目の前に浮かぶ与島と小与島の間の小さな海峡だ。ここでは前日のプラティクスで真鯛をあげている。魚探とGPSでポイントを確かめ、鯛ラバを底まで沈めると、ゆっくりと巻きあげながらアタリを探った。先ほどまで音を立てていた雨は上がり、雲の隙間から朝の光がこぼれはじめている。
この大会で「チーム太平洋マリン」としてSR-Xに乗り込んだのは、はるばる高知市からやってきた西沢史生さんと渡辺浩治さんの二人。西沢さんは高知県のマリンショップ「太平洋マリン」の社長。渡辺さんは同じく高知で自営業を営むYF-27のオーナーだ。二人とも高知を拠点に釣りを楽しむ熟練のスポーツアングラーだが、瀬戸内海では時折の遠征で乗合船を利用する程度。そのハンディを克服できるかどうかが、トーナメントの成績の鍵となりそうだ。
今大会の参加者は20チーム63名。スタートはこの大会で主流となりつつあるオープン形式で、6時のスタートフィッシングとともにそれぞれのホームポートから出港し、釣りを開始。その後、締め切りの午後1時30分までに検量/表彰式会場となる与島(香川県坂出市)に釣果を持ち込むというルールだ。
SR-Xは最初のポイントに見切りを付けると、瀬戸大橋を中心とする島々の周りを移動しながらゲームフィッシュを追い求めるが、思うような結果が得られない。そのうち時間の経過とともに他の参加艇の姿も見られるようになる。そうした参加艇同士で情報交換をしながら次々とポイントを変えていくが、なかなか結果が出ない。
真鯛が出てくれないこともあり、渡辺さんはターゲットを青物に切り替えた。バウステップに立ち、レールに身体を預けてスイミングジグをフルキャストする。時折他船がそばを通過し引き波を立てていくが、それでもSR-Xは安定性を発揮する。
西沢さんはドライバーズシートの横で魚探をチェックし、ステアリングを操作しながらのキャスト。安定したフィッシングポジションという面でもSR-Xは二人の期待を上回る性能を発揮してくれている。しかし、肝腎の釣果が得られない。ポイントとターゲットを絞りきれぬまま、時間は刻々と過ぎていった。
正午を過ぎると検量会場となった与島のフィッシャーマンズワーフに参加艇が姿を見せはじめた。イケスからその日の釣果を取り出し、検量へと向かうアングラーたちの表情は悲喜交々だ。順位は真鯛の部、青物の部共に、合計2尾のサイズの合計で競われる。この日の釣果は決して良好とはいえず、真鯛で二尾を揃えたチームは参加20チーム中9チーム、青物では4チームに釣果があったが、どのチームも1本のみという結果だった。
チーム「太平洋マリン」は最後まで粘り続け、与島フィッシャーマンズワーフに入港したのは締め切りに近い時間だった。が。釣果はゼロ。残念な結果ではあったが、これも釣りだ。「参加できて本当に楽しかった。チャンスがあればまた参加したい」と渡辺さんは晴れやかな表情で語ってくれた。
青物の部で優勝したのは66.5センチのハマチをキャッチした「丸坊主」。そして真鯛の部では64.3センチ、41.9センチの2尾を揃えた「辛島伝説」だ。「辛島伝説」のメンバーは瀬戸内海の大会では毎回のように上位に絡む常連チーム。「(潮が)上げの時間ではなかなか釣果が得られなかったが、同じ場所で下げの時間も粘り続け、いい結果が出た。今年は真鯛でいい成績が上げられなかったので優勝できてよかった」と、チームの面々は誇らしげだ。
前夜には雷雨となり、強風波浪注意報も出され、開催も危ぶまれた今大会だが、事故もなく無事終了。全員で記念写真に収まると、参加各チームは各々のホームポートへと帰路についた。
瀬戸内海とは四国を挟んだ太平洋でボートフィッシングを楽しんでいる渡辺浩治さん。キャスティングではメーターを優に超えるシイラ、ジギングでは90センチクラスのメジロなど普段から豪快な釣りを楽しむスポーツアングラーだ。YF-27のオーナーだが、いま、セカンドボートの購入を検討している。その第一候補として注目しているのが「SR-X」。
「YF-27では外洋に出て楽しんでいますが、近場で気軽に楽しむ釣りのために、燃費が良く、取り回しがラクで小回りの利くセカンドボートが欲しいと思っているんです。今日実際に釣りをしてみて大いに気に入りました。まず走りや安定性の面。釣りをしながら19フィートというサイズを忘れさせる安定感があり、23フィート以上のクラスに乗っているような感覚になります。また釣りスペースもしっかりと確保されており船内での動きやすさも予想以上でした」
大会では慣れない海域で不本意な結果に終わったが、SR-Xの性能を大いに堪能した1日となったようだ。
高知市のヤマハマリントラスト店・太平洋マリンの西澤史生さんは、愛媛大会に続いて今大会にSR-Xに乗船して参加した。
「走行性能や安定性、釣りやすさは評判通りでした。SR-Xには115馬力のバリエーションもありますが今回の乗ったのは70馬力。5000回転までの燃費が驚くほどよかった。さらに、キャノピー付きで、釣り具などの荷物を積んだ状態でも25ノットは出ていました」とエンジンとのマッチングに注目していた。
「走行性能、安定性もいいので、高知などの太平洋側でも自信をもっておすすめできるボートですね」とその優れたポテンシャルに太鼓判を押している。
今大会にはこの秋にデビューしたばかりのニューモデル「YF-24」が参加し注目された。人気モデル「YF-23」のグレードアップモデルとして登場した「YF-24」は、新設計のハルがもたらす抜群の走行性能、横揺れを抑えた安定性、風流れ抑止性能を発揮するばかりでなく、広いデッキスペースや全週を通して深めのブルワーク高さを確保するなど釣りやすさが魅力。今回乗船したチームメンバーは計4名だったが、広々とした船上ではストレスをまったく感じることなく、余裕で競技に没頭することができた。釣果はSR-Xと同じく苦戦を強いられたが、なんとか32.2センチの真鯛をキープし、11位という成績を収めることができた。
YF-24のキャプテンとした乗船したのは香川県の観音寺市のヤマハマリントラスト店の・室本マリーナの松浦良典さん。
「きょうは風も強かったのですが走っていてバウがとられることなく安定して良く走りました。小回りは利くし、ピッチング、ローリングにも強さを発揮していました。キャビンでの居心地も良かったですよ。ブルワークの高さがあって安心感があるので、釣りだけでなくお子さん連れのファミリーレジャーにもおすすめできるボートですね」とYF-24の性能について語っていた。